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その頃、世界は悪の魔王の配下に置かれ、人々は魔物の存在に怯えて暮らしていました。
しかし、グランドールに住んでいた一人の若者が、魔王を倒すべく立ち上がりました。若者は、旅の途中で出会った二人の仲間とともに、ついに魔王を倒し、その魂を封印することに成功したのでした。
それから七百年が過ぎました。その間、魔物が再び現れることはなく、
世界は平和な時を過ごしていました。
そんな平和なある日、グランドール城、謁見の間でのこと。王様と王女との間で、王女の結婚について云い争いが起こっていました。王様が決めた結婚を、王女が嫌がり、王女は謁見の間を飛び出していってしまいます。
王様がやれやれと思った刹那、とんでもない報告がもたらされました。
なんと、七百年前に封印されていたはずの魔王が復活したというのです。
すわ一大事、と慌てる王様。しかし王様は慌てるばかりでどうにも頼りになりません。本来の王位継承者である王妃が、どんどんと的確な指示を出していきます。王様は、蔑ろにされているみたいでちょっと気に入りません。
王妃は、伝説の勇者の末裔に魔王の討伐に向かわせることを決めます。それは、伝説の勇者の遺言でもありました。
ところが、末裔を呼び出したのにやってきたのは軍部大臣。末裔とともに
自分も魔王の討伐に向かわせろと無茶を云いだします。
王妃は勇者の遺言に背くとこれを却下します。軍部大臣は引き下がります。
その後も王妃は八面六臂の大活躍。まず書記官を呼び、王家から発布する布令と声明文の文言を用意するよう云い渡すと、返す刀で財務大臣に、勇者の末裔に渡す路銀の用意をさせます。
他国からの婿養子である王様は、この王妃の八面六臂の活躍にますます自分が蔑ろにされていると焦燥を覚えます。その時でした。
なんと、王女様が行方不明になったという知らせが齎されました!
どうやら、結婚話による王様との諍いで腹を立てた王女は、そのままどこかへ消えてしまったようなのです。
世界を揺るがす一大事が起きたというのにあの娘は何をやっているのだ、と王様は怒り心頭に発します。
そこへ、予てより呼んであった伝説の勇者の末裔が謁見の間に現れました。
王様は、魔王の討伐を型通りに命令します。
さらに、財務大臣との打ち合わせの通り、旅の路銀として1000ゴールド、さらに、王様のコレクションであった銀の剣と龍の鱗の盾を勇者の末裔に授けます。
末裔が出立をしようとしたその刹那、王様がとんでもないことを口走ります。
なんと、王女は魔物に攫われアマルアの別荘に囚われているから、まずはそこへ行き、王女を魔物の手から救い出してくれと依頼してしまうのです。
王女がアマルアの別荘にいるかどうか、わかっていないというのに!
王様の暴走は止まりません。
無事に王女を救い出した暁には、末裔を王女の婿として迎えるとまで約束をしてしまいます。
普段は兵士として暮らしている末裔、とんだ玉の輿に乗るチャンスだと大いに張り切り出立をしていきます。
王様は、魔王復活の知らせが齎されてから、全てが王妃の云うままに進んでしまったことがひどく気に入らなかったのだと云い訳をします。王らしいところを見せたかったのだと云い訳をします。そうして、とても見苦しい姿を見せてしまいます。
いずれにしても、勇者の末裔にとんでもない嘘をついてしまったのです。
悪いことは重なるもので、そこへ、王妃が王女を連れて謁見の間に戻ってきてしまいます。
そうです、王女は城の中にいたのです!
自分のついた嘘の重大さに気づいた王様は、ついには気を失って倒れてしまったのでした……。
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