タイヨウくんと目が合ってしまった麦江田はその瞬間「しまった」と焦りを覚えた。
マークしている対象に見咎められるというのは警備員としてまったく初歩的なミスである。
もしもマークしている対象が精神的に追いつめられていた場合、警備員の姿を観ただけで精神の均衡が破られ暴発するやも知れないからである。
しかしこの場合はそうではなかった。麦江田を見たタイヨウくんはにっこりと微笑み、あまつさえ会釈までしてみせた。
その純粋且つ爛漫な素振りに、麦江田は思わずマークをしていた自分は間違っていたのではないかという不安に襲われた。