前章で見た通り、羅沢村絵はいま、西子に謀られモールの備品倉庫に閉じこめられている。

まさかこの数分前まで、自分のすぐそばに村絵が居たとは夢にも思わない麦江田は、村絵不在の連絡に「生放送に支障が出なければいいが」と危惧したものの、警備の担当グループが異なることもあって、さほどの緊迫感を覚えることはなかった。

現段階で自分がするべきことは村絵の不在を情報として頭に入れておき、司令部からの指示が出た際には迅速に行動をする、ということだ、とあらためて思い描きつつ、自らの持ち場であるモール内の巡回警備に戻った。