この時、麦江田は心底から安堵していた。

自分の不注意から始まった今回の件が、事件化することなく収まったことを心から喜んでいた。

いまや笑い声すら飛び交うほどに打ち解けた小供達と頬野あやちゃんの母親との会話を聞きながら「この仕事のやり甲斐はこういう瞬間にあるのかも知れない」とそんなことを考えていた。

それから、頬野あやちゃんの母親の承諾を得てからタイヨウくんを解放し、その旨を警備室に連絡した。

解放する際に、タイヨウくんに「これからは困ったことがあったらすぐにお店の人に云うんだよ」と云い聞かせた。