頬野あやちゃんの母親である頬野耳子が、娘とはぐれた場所であるおもちゃ売り場に再び現れたのである。

刑事の捜査は現場百回と云われるほど、事件の発生現場に足繁く通うことで手掛かりを見つけていくというが、この時の耳子の気分もそんな感じだったに違いない。

インフォメーションの菱川ふみ乃からは、あやちゃんが見つかったときのためにもあまりウロウロと動き回らないでくれと釘を刺されていたのだが、耳子としたら居ても経ってもいられずこうしてモールの中をうろついてしまっているのである。

当然、いま耳子は泣きたいような気分だ。