頬野あやちゃん(3歳)はこう云っているがそれは飽く迄、小供側からの一方的な云い分である。

おそらく母親の頬野耳子の側から云わせてみれば、また違う事実が発覚する筈である。たとえば耳子はこの時「お前のようなわからんちん」などとは口にしていなかった。

「そういう聞き分けのないことを云っているとお母さん、マジ怒るよ」と云ったのである。

ただ、それを云ったときの耳子の表情がまるで鬼のような世にも恐ろしげな、いまにも取って食いそうな形相だったことは耳子、あやちゃんの親子共に認めるところであろう。