この時、警備員の麦江田がタイヨウくんに対して施していた説得は、タイヨウくんの心よりも、その傍らで固唾を呑んで状況を見守っていたヨコタ自動車の販売員を名乗る男の心に響いてしまっていた。

警備員の麦江田がタイヨウくんに向かってかける説得の言葉の数々が、まるで販売員を名乗る男が抱えている問題/秘密に対する鋭い指摘のように思われてしまい、その為にこの男は、傍らに立っているだけなのに次第に追いつめられていくような心持ちになっていったのである。

そうしてこの数分後、男はとんでもない行動に走るのである。