玩具店の店員の態度が鷹揚だったのは、この店員がワシントンの桜の木の逸話を殊の外愛好していた為である。

今年三十歳になるこの男性店員はいつか、自分もワシントンの父親のように小供が正直な心掛けを見せることがあればその時はきっと褒めてやろう、とその光景を夢窓しながら生きてきたのだった。

そうしていま、偶然にも自分が夢想してきた状況が訪れたのである。これが張り切らないでいられようか。男性店員はタイヨウくんに対して殊更に鷹揚な態度を取って見せ、タイヨウくんを許すばかりかその正直なことを褒めすらしたのであった。